コラム
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平成27年(以下本年といいます)9月11日,衆議院本会議において改正労働者派遣法が可決,成立し,同月30日に施行されました。
すでに昨年に法案が提出されていたものの,2度の廃案に追い込まれ,3度目の正直ということで提出された本年に至っても,安全保障関連法案の審議等の影響を受けて遅々として審議が進まず,施行予定日が本年9月1日から同月30日に先延ばしされる事態に陥りました。
本改正が未了のまま労働契約申込みみなし制度が施行されることで,後に説明するような実務への影響も懸念されましたが,今般無事改正がなされました。
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改正内容は,①全ての労働者派遣事業を許可制に一本化,②期間制限ルールの変更,③雇用安定措置やキャリアアップ措置の実施の義務化などです。
①は,平成26年6月1日時点では,届出制(特定労働者派遣事業)が約76%であったのに対し,許可制(一般労働者派遣事業)は約24%に過ぎませんでした。これがすべて許可制に移行することになります。なお,特定労働者派遣事業を行っている者に対しては,3年間の経過措置等が設けられています。
③は,派遣元については,雇用安定措置・キャリアアップ措置の実施義務,均等待遇の推進に関する考慮事項についての説明義務が課され,派遣元管理台帳への記載事項も追加されました。派遣先については,派遣労働者と派遣先社員の均衡待遇の推進に関する配慮義務,キャリアアップ支援に必要な情報の提供努力義務,雇入れ努力義務,募集情報提供義務が課されました。
なお,平成24年改正で導入された労働契約申込みみなし制度(派遣先が,一定の違法派遣(派遣禁止業務への従事,無許可事業主からの労働者派遣の受け入れ,派遣可能期間を超えた労働者派遣の受け入れ,偽装請負)を受け入れた場合に,その時点で,派遣先が派遣労働者に対して,その派遣労働者の派遣元における労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申込みをしたものとみなされる制度。派遣先が善意無過失の場合を除きます)については,本年10月1日に施行されました。
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②は特に重要です。具体的には,派遣期間制限のなかったいわゆる26業務と,期間制限のあった自由化業務の区別がなくなり,後述する例外に該当しない場合は,どのような業務であっても期間制限に服することになりました。
期間制限については,まず(ⅰ)派遣先事業所単位(「支店」など)で考える必要があります。同一の派遣先の事業所において,労働者派遣の受入れを行うことができる期間は,原則3年が限度となります。ただし,派遣先の過半数労働組合等からの意見聴取手続を経て,さらに3年間延長することが可能となっております。
また,(ⅱ)派遣労働者個人単位でも期間制限が問題となります。同一の派遣労働者を,派遣先の事業所における同一の組織単位(「課」など)において受け入れることができる期間は,原則3年が限度となります。
もっとも,(ⅰ)(ⅱ)には例外があり,派遣元で無期雇用されている派遣労働者,60歳以上の派遣労働者等には適用されません。
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これまで,派遣労働者の行っている業務が26業務に該当するか否かの判断基準は明確ではなく,26業務該当性が問題となるケースがままありましたが,本改正により,その点に関し判断に悩むことはなくなりました。もし,本改正がなされることなく労働契約申込みみなし制度が施行されることとなれば,基準の不明確さ故に,自由化業務であるものを誤って26業務として扱い,その結果,違法派遣に該当するとして労働契約申込みみなし制度が適用される事態が生じることが懸念されていました。
また,26業務が廃止されたものの,派遣元で無期雇用されている派遣労働者等については期間制限の対象外とされました。総務省や厚生労働省の資料によると,本改正前時点で,期間制限対象外となる26業務の従事者は派遣労働者全体の約39%であったようですが,派遣元で無期雇用されている派遣労働者の割合は約17%でした。現在は2倍強の開きがありますが,今後は,派遣先が,派遣元で無期雇用されている派遣労働者を採用するケースを増加させることも考えられます。
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新制度は始まったばかりであり,本改正による派遣先,派遣元への負担の増減,派遣労働者の待遇改善への影響については,今後の帰趨を見守るほかありません。新しい情報につきましては,今後も随時,当事務所でフォローアップしていきます。
(参考)厚生労働省HP「平成27年労働者派遣法の改正について」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386.html